調布の森に、「人・地域・時間をつなぐ」
新たなコミュニティを
~「つなぐTOWNプロジェクト」第5弾~
東京都調布市にあるNTTグループの広大な研修施設。そのグラウンド跡地に、「人・地域・時間(とき)をつなぐ」をテーマとする新しいコミュニティが2019年4月にオープンしました。「つなぐTOWNプロジェクト」の第5弾として、サービス付き高齢者向け住宅「ウエリスオリーブ成城学園前」と分譲マンション「ウエリス仙川調布の森」を一体的に整備。これまでの経験を活かし、「つなぐ」しくみにもさらなる工夫を凝らしています。この構想を形にしていくプロセスで中心的な役割を担った2人のキーパーソンが、このプロジェクトにかけた思い、具体的な取り組み、そして今後の展望を語ります。
住まいの新しいしくみをもたらす
大学
私たちNTT都市開発グループは、子どもからお年寄りまで、幅広い世代の方々が将来にわたって「長く、共に、心地よく」暮らしていただける住まいづくりとして、『つなぐTOWNプロジェクト』に取り組んでいます。
キーワードの「つなぐ」には、「家族をつなぐ」「居住者同士・地域をつなぐ」「時間をつなぐ」という3つの意味を込めています。まず、「家族をつなぐ」というのは、親子が近くで一緒に暮らせるようにすることです。次に、「居住者同士・地域をつなぐ」は、居住者同士はもちろん、地域との交流も育み、多世代がいきいきと暮らすことのできる場所をつくることです。そして、「時間をつなぐ」は、年月を経ることに伴う生活形態や身体的な状況の変化にきめ細かく対応し、長く住み続けられる住まいとすることです。
これを、サービス付き高齢者向け住宅と、分譲住宅を組み合わせ、かつ交流施設とソフトサービスを設けることによって実現させました。超高齢社会の到来を見据え、私たちが先行的に提案してきた一つの解決策です。これまでに津田沼、武蔵野関町、町田中町、武蔵野富士見町という4カ所で取り組んできました。
「つなぐTOWNプロジェクト」の第5弾となるこの度の取り組みは、東京・武蔵野の自然美が残り、国分寺崖線の自然と高台の清々しさが広がる調布市入間町で展開しています。ここはNTTグループゆかりの場所でもあり、かつては電気通信省の職員訓練所の一部で、現在はNTT中央研修センタが立地しています。本プロジェクトでは、当施設のグラウンド跡地に、サービス付き高齢者向け住宅である「ウエリスオリーブ成城学園前」と、分譲マンション「ウエリス仙川調布の森」を一体開発しました。ご家族との近居や、ご入居者同士や地域の方々との交流を促し、末長く心地よく快適に暮らせるコミュニティを育み、地域と一体となって新たな人生のステージを楽しめる施設。そして、文化・福祉拠点としても地域に役立つ存在。私たちは、そのような新しい住まいづくり、街づくりをめざしました。
安心して長く暮らせる住まいづくり
大学
「ウエリスオリーブ成城学園前」には、自立した生活が可能な方にご入居いただけ、プライバシーや安心を両立させて、自由に過ごせる「スイートルーム」と、24時間365日の施設内介護サービスが受けられる「ケアレジデンス」の2種類があり、生活スタイルや身体の状態に応じてそれぞれを選ぶことができます。自立型の住まいのみだと、将来介護が必要になった際、別の施設へ移る必要が生じることになり、ご入居者にとっては不安が残ります。そうした点を考慮し、自立型の住まいと介護型の住まいを併設させました。「スイートルーム」のご入居者が介護を必要とするようになった場合は、「ケアレジデンス」に移り住みが可能です。
渡部
「つなぐTOWNプロジェクト」の開発には、高い関心が寄せられていると私たちは感じています。今は元気でも、いずれ訪れる老いと、介護が必要になった場合の生活に漠然と不安を感じている方々は少なからずいらっしゃり、「ウエリス(分譲マンション)」ご購入者の方々からも、将来移り住みも可能な「ウエリスオリーブ(サービス付き高齢者向け住宅)」や、ヘルパーやケアマネジャーといった介護スタッフが常駐する介護事業所が併設されていることは大きな安心感につながる、との声を多くいただいています。
また、「つなぐTOWNプロジェクト」では、「ウエリス」を購入された方々の2親等までのご親族は、「ウエリスオリーブ」の入居優先権が付与されるので、親子の近居が可能となっていることも安心感につながるのではないでしょうか。
いきいきと暮らしていただくための環境づくり
大学
「ウエリスオリーブ成城学園前」には、入居者の方々が憩い、お食事を楽しめる「つなぐカフェオリーブ」というレストランを兼ねた交流施設があります。ここで地域の方々にもご参加いただける大小さまざまなイベントを催し、交流機会の創出に努めています。
そのなかに併設されている「まちライブラリー」は、日常的なコミュニティの創出を実現するために私たちが強くこだわった部分です。これは「"本"を通じた人と人の出会いの場」であり、ご入居者や地域の方々が持ち寄った本で創る手づくりの図書館です。持ち寄った本には、寄贈者からのメッセージカードが入っており、その本を読んだ方々がそこに感想を書いていくことで、「人」や「地域」とのつながりが自然に生まれていきます。すでに、学校帰りにここに寄る子どもたちも出てきています。「つなぐカフェオリーブ」は、分譲マンションを販売するショールームの段階からオープンさせることで、早期のコミュニティ形成を図ることに寄与し、これがグッドデザイン賞をいただけた一つの理由にもなりました。
渡部
「食事」にも非常にこだわりました。以前の「ウエリスオリーブ」では、食事をクックチル(調理済み冷蔵食材)で提供していましたが、全物件で現地調理方式に切り替えました。ご高齢の方にとって、健康を維持するためにも、また暮らしに彩りをもたらす意味でも、食事はとても大切な機会です。大切な「食」を楽しみ、新たな活力の源としてもらいたい――そんな思いで現地調理にこだわりました。季節の催事に合わせたイベント食や身体の状態に応じたきざみ食なども提供し、誰もが食事を楽しめる場所となるよう取り組んでいます。
大学
もう一つこだわったのは「ランドスケープ」です。中庭には、多世代の人々が集い、コミュニティを育む場である「みんなの広場」、屋上には晴れた日に富士山が一望できる「屋上広場」を設けました。また、敷地内には武蔵野の原風景が残る森の散策路「みんなの森」があり、気軽に森林浴を楽しめるようになっています。中庭やテラスはもちろん、建物の周囲にもクスノキやケヤキなどの保存樹を活かし、緑の潤いを身近に感じられるようになっています。こうしたランドスケープを通じて、時に交流をし、時に一人の時間も持ちながら、季節を感じられるいきいきとした暮らしを送っていただきたい、というのが私たちの願いです。
より豊かな人生を過ごしていただける場所として
大学
今後に向けては、「サービス付き高齢者向け住宅と分譲マンションの融合」というコミュニティをさらに進化させ、同じ敷地内に配達サービス可能なスーパーなどの商業施設を組み込んだり、より幅広い世代との交流を目的に学生寮を組み込んだり、といった展開をしてみたいですね。「つなぐTOWNプロジェクト」を一つの街として捉えた場合、年齢構成が高齢者に偏ると、停滞感や閉塞感が生まれやすくなります。そこで、学生寮などを誘致し、若い世代の方々も含めた交流機会をつくって、活力を生み出していくという街づくりができたらいいですね。こうしたことが実現できれば、「ウエリスオリーブ」がもたらす価値は、さらに大きくなるはずです。
渡部
「ボランティア活動を通じたモチベーションの創出」というのも私たちが考えていることの一つです。仕事のリタイアに伴い、役割を失うことでコミュニティから離れることになり、そこにあった生きがいの一つが失われたと感じる方々も少なくありません。そのような方々も、ボランティア活動を通じて役割を見出し、新たな生きがいを見つけられる可能性があります。地域清掃、学童の登下校サポート、環境保全、防災をはじめ、シニア世代の方々が取り組める活動、あるいは担える役割は数多くあります。私たちとしては、新しい生きがいを手に入れるため一歩を踏み出すお手伝いができれば嬉しいですね。
大学
多くの高齢者の方々は、「たくさんではなくてもいいから、一人か二人でも、心を許せる仲間が欲しい」と望んでいらっしゃいます。そうした仲間の存在が生きる原動力を生み、結果として心地よいコミュニティが生まれることで、健康寿命の延伸へとつながるのではないかと感じています。私たちは、「ウエリスオリーブ成城学園前」を、そのような機会が生まれる場所にもしていきたいと考えています。そのために、日々ご入居者やご家族と接する運営スタッフからの声を活かしながら、運営上のさまざまな改善や新しい試みを重ねています。ここをより豊かな人生を過ごせる場所として成長させていくことが、私たちの使命だと思っています。
グッドデザイン賞(2019年度)の受賞について
「ウエリス仙川調布の森・ウエリスオリーブ成城学園前」は、2019年度グッドデザイン賞を受賞しました。審査委員の評価として、以下のようなコメントをいただいています。
「分譲住宅とサ高住の一体開発による多世代近居は最近の大きな流れであるが、その際に重要になるのはレストランカフェの存在で、事業としても周辺地域との交流の面においても核になってくる。レストランカフェと中庭を一体のデザインとすることで、セキュリティラインの内外をうまく連続させている点が評価できる。地域交流のプログラムとして重要なまちライブラリー機能を販売ショールームの段階から、会員を募りながら実践したことで、コミュニティ醸成にも企画段階から力を入れていることがよくわかる。オフィス、中高一貫校、保育園という周辺の街と一体で、多世代の暮らしの場となるということも説得力があり、今後の街としての熟成に期待できる。」