「氷蓄熱システム」で、CO2排出量とエネルギー使用量を大幅削減
NTT都市開発のグループ企業・東京オペラシティ熱供給(株)では、1995年から東京・西新宿エリアの初台淀橋地区(約10.5ha)において、複数の建物に冷暖房用熱源を供給しています。
これは「初台淀橋地区地域冷暖房」といい、省エネ、CO2排出削減、公害防止、都市景観の維持など多様なメリットがあり、現在、初台淀橋地区にある東京オペラシティビル(地上54階・地下4階)と隣接する新国立劇場(地上5階・地下3階)、NTT東日本本社ビル(地上30階・地下5階)の3施設・延床面積計約397,000m2に熱供給を行っています。
熱源は、都市ガスと電気のベストミックス方式。暖房用には都市ガスを用いて蒸気ボイラーで蒸気と温水を供給し、冷房用には蒸気を利用した吸収冷凍機および夜間電力を利用したターボ冷凍機を駆動し冷水を供給するというように、安定的かつ経済的な組み合わせとしているのが特徴です。
そして2008年には、経済産業省の「先導的負荷平準化機器導入普及モデル事業」の助成を受けて、「氷蓄熱システム」を導入し、一層の省エネ・CO2排出削減と、電力消費のピークが集中する夏の昼間の電力負荷低減を目的とした熱供給設備の増設を実施しました。
熱供給の能力と効率を高めるため、新たに導入されたこの「氷蓄熱システム」。NTT東日本本社ビル・東京オペラシティビルの地下には熱供給プラントが2つ(第1、第2)ありますが、第2プラントの水蓄熱槽5,000m3のうち870m3(約18%)を、氷蓄熱槽として利用することとしました。シャーベット状の氷を貯蔵する本システムは「ダイナミック方式」と呼ばれますが、従来の水蓄熱槽を改造して利用した点や、経済的な夜間電力の有効利用が期待できるなど大きなメリットがあります。
工事期間は実に1年間。重量が23tもある巨大な冷凍機の搬入や7機の熱交換器の設置など、オフィスや劇場・商業施設などの営業を妨げず、既存システムを運用しながらの大規模改修は大変な作業でしたが、結果、蓄熱容量は従来と比較して約1.7倍の12,000RTh(※)にアップ。また、突発的な冷熱源機器停止などの不測の事態においても、迅速な対応が取れるようになりました。
「氷蓄熱システム」の導入から約2年を経た2010年11月、プラントの運転実績データを解析したところ、ほぼ当初の予測どおりの電力負荷平準化効果(夜間シフト率)を確認、その効果が実証されました。
中でも、夏期ピーク時の昼間における最大需要電力(デマンド)の低減は約200~400kwと、電力使用のピークカットでも大きな効果を上げています。また、年間CO2排出量では約2.2%(269t-CO2)削減、エネルギー使用量についても原油換算で年間約496klに相当する省エネ効果を達成しています。このデータは、限られたスペースで蓄熱槽の高効率化を可能にした事例として、経済産業省に報告されています。
今後も、第1・第2プラントのリニューアルや運用改善に向けて取り組むとともに、芸術・文化の街区にふさわしい環境の実現に向けたエネルギーの有効利用を図り、地球温暖化対策を積極的に推進していきます。
- ※RTh:冷凍能力(冷凍トン)
氷蓄熱システムについて説明する東京オペラシティ熱供給の河東田取締役技術部長(中央)、大住総務部長(右)、金井プラント所長(左)
今般導入した氷蓄熱システム