生物多様性保全
自然と共生するオフィスビル・商業施設
NTT都市開発グループでは、オフィスビルや商業施設の開発において、それぞれの場所や物件の特徴に応じ、樹木・植栽や水場をはじめとする自然の要素を積極的に取り入れています。維持管理を丁寧に行い、自然を良好な状態に保つとともに、施設を利用される方々に楽しんでいただけるようにしています。こうして、人にとっての快適さを追求するとともに、都市における生物多様性の保全にも貢献するよう努めています。
グリーンインフラとしての広大な緑地(品川シーズンテラス)
品川シーズンテラスは、既成市街地で分断されている東京湾臨海部の沿岸生態系と武蔵野台地の樹林生態系とを生産的に結びうる場所に立地しています。これらの生態系ネットワークをつなぐ「グリーンインフラ」としての役割を担うため、約3.5haの広大な緑地には、地域性を考慮した樹種(オオシマザクラ、コナラ、クヌギ、シラカシ、ヤマボウシなど)を配置し、こうした樹木構成が野鳥の飛来も促しています。植栽計画をつくる際には、地元の方との協議の場を設け、ご意見をできるかぎり計画に反映しました。また、トンボや水鳥が訪れることのできる湿生花園も設けています。毎年5月頃には、カモの親子が水辺で遊ぶ姿や庭園内を歩く様子が観察されています。
こうした取り組みにより、品川シーズンテラスは公益財団法人都市緑化機構から、社会・環境に貢献する緑化計画として「SEGESつくる緑」に認定されました。また、2017 年には安心・安全に誰もが利用できる快適な優れた緑地として、「SEGES都市のオアシス」に認定されました。
年月とともに新たな可能性を生む緑地空間(グランパーク)
JR田町駅から徒歩5分ほどに立地するグランパークでは、1996年の竣工時から敷地の約6割を緑豊かなオープンスペースとしています。建物前面の広場に多様な植栽を施しているだけではなく、建物の周囲全体に豊かな緑があります。日々の施設メンテナンス業務の一環として、定期的な剪定(せんてい)や植栽管理、落ち葉などの清掃をはじめ、花壇の植え替えも季節に合わせて実施しています。夏祭りをはじめとする多彩な催しも行い、地域の交流の場ともなっている当ビルは、公益財団法人都市緑化機構から2013年に「SEGES:都市のオアシス」として認定され、2016年と2019年の2回再認定されました。
空中庭園における四季折々の風景(基町クレド)
基町クレドは、地上33階・地下2階の複合商業施設です。6階の屋外部分に設けた、広さ約1,200m2の空中庭園「スカイパティオ」には、四季折々に花や実を付ける樹木や草花を植えており、ヒヨドリやスズメといった鳥が数多く訪れます。中央の広場を囲むように設けたせせらぎにはメダカを放流しており、この池の中で世代交代を繰り返しています。
「スカイガーデン」で里山を再現(日経ビル・JAビル・経団連会館)
NTT都市開発ビルサービス(株)が不動産管理運営業務を受託している日経ビル・JAビル・経団連会館(東京都千代田区)では、JAビルと経団連会館の間にある低層階屋上部分に日本の里山を再現し、都心のクールスポットとしてスカイガーデンを整備しています。スカイガーデンには約20平方メートルの水田があり、毎年の恒例行事として、地権者の皆様・テナントの皆様などをお招きし、4月末に「田植え・一番茶茶摘み」、5月末に「茶摘み」、10月末には「稲刈り」を行っています。
2018年の田植えは4月19日、地権者の皆様・テナントの皆様、近隣ビルのオフィスワーカーなど、約50名で行いました。また、稲刈りを10月23日に実施。近隣ビルのオフィスワーカーや保育園の子どもたちを含めた約60名の参加者が集い、酒米の「ナカテシンセンボン」の稲刈りを行いました。作業後は、千葉でバックアップのために栽培しているお米からつくったおむすびを試食し、なごやかな雰囲気のなか豊作を祝いました。収穫した米は、11月21日にスカイガーデン内「大手町神社」で行われた例大祭で同神社に奉納し、残りは関係者の皆様にお配りしました。
また、2013年度からは、スカイガーデンから出る落ち葉や剪定枝などのごみの減量と資源の有効利用を目的に、コンポスト(堆肥化容器)を設置しています。当施設で発生した落ち葉や剪定枝・刈り草などを一時的にコンポスト内に堆積させ、時間の経過とともに発生する微生物により分解された土壌改良材を、再びスカイガーデンの有機堆肥として循環利用しています。なお、製造された堆肥の一部は、「稲刈り」に参加された方にお配りしました。
住宅における生物多様性への配慮
NTT都市開発では集合住宅設計基準を策定し「環境創造」の一環として、建物と自然との調和を意識した植栽計画を行うことや、樹木に樹種名や特徴説明のプレートを付け、自然や生態系を身近に感じられるよう配慮しています。
人と自然と地域をつなぐ街づくり(ウエリス仙川調布の森・ウエリスオリーブ成城学園前)
2019年に竣工したウエリス仙川調布の森(東京都調布市)・ウエリスオリーブ成城学園前(東京都調布市)は、周辺の緑地や雑木林を守りながら、次の世代へ引き継いでいくことを使命としています。
本建物が立地する調布市入間町は、立川市から大田区にかけて連なる国分寺崖線の緑や、野川・入間川により、日常のなかで自然の潤いや四季の風景を感じられる地域です。
開発では、緑豊かな崖線や雑木林を「調布の森」として保全、活用、育成しながら、自然環境と調和した、ゆとりある住環境を備えた街づくりをめざしました。
豊かな調布の森を擁する、立地の特色を活かすために、緑とともに生活しながら、コミュニティが育まれる"つなぐ仕掛け"にこだわっています。
アプローチや中庭には、地域とのつながりを示すシンボルとして、既存樹木を活用。また、居住者同士の交流を誘発する小空間と樹木を融合させた「みんなの広場」など、緑を通じて住民同士が交流できる工夫をこらしています。敷地内には、「みんなの森」と名付けた崖線の雑木林を活かした散策路を配置し、自然と親しめる空間としています。
めざすのは人と緑を"つなぐ"街づくり。住宅開発を通じ、地域で守り育ててきた自然を活かしながら、緑と調和する暮らしを広げていきます。